飛びこむ、瞬間
スカートのまま飛びこんで泳いだ午後。
すごくこわかった。飛び込むまで。
浅すぎないか、
岩がないか、
転ばないか?
でも飛び込む前の
この気持ちをわたしは愛している。
飛び込んだあとには、
川の気持ちよさ、
川の流れ、
ちいさな命が蠢く世界がある。
しあわせで、しあわせで。
じぶんの体をすり抜けて、
川の水は流れてゆく。
川に体を浮かべて、
見上げる景色。
空、風に揺れる草たち、
飛んでゆく鳥、橋、。
じぶんの目で、体で、
川を感じられている、
その瞬間が尊く、
このうえなくしあわせだった。
わたしは生きている。
生きていることを思い出した。
目が覚めたように。
今は京都。
ほんのすこし前まで清らかな川の流れに身を置いていたのに、大地の地下を走る乗り物に乗って、私は京都の宿に戻った。
どこに行っても、
今もずっと、
川は流れている。
とめどなく、ひろいひろい海へ。
川からあがると、
どこからかうたがきこえた。
でもだれもいなかった。