駅を青く染めた夜満月は真っ白いインクのビンを割ってしまった青く青く深く青くそこに海ができたようなそこに沼ができたようなそこに泉が湧いたようなそれともだれかの涙かな割れてしまったインクのビンはまるでわたしのこころのようで涙で濡れる満月は決し…

満月を舐めようとしてべろを伸ばすが届かない横断歩道を渡りながら伸ばすがやっぱり届かないそれは無味ではなく風のあじいつかとどくかあのひかるおおきなおおきなまあるい石に

おもいっきりわらえばいいよおもいっきり泣けばいいよおもいっきり叫べばいいよおもいっきり破ればいいよひそかにわらえばいいよしくしく泣けばいいよひっそりとつぶやけばいいよやさしくつつめばいいよあなたのきもち

片鼻の折れた豚の出てくる夢をみたそれは、なんて切ない、それは、なんて愉快な、物語だったろう。それを思い出せない。わたしは一瞬一瞬をきもちいっぱいに吸い込んで、食べてしまう。喉元を通る頃には、つぎの感情が湧きあがっている。毎瞬が輝き、色あせ…